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SGLT2阻害剤の使い方

  • 盛岡減量研究所
  • 2015年6月8日
  • 読了時間: 3分

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過日、某病院内科からSGLT2阻害剤が3か月の長期処方で出されたとの話を聞いて、おったまげた。相当危険な処方だ。いくら長期投薬が解禁されたとは言え、初回投与は基本的に2週間処方が妥当であろう。

多くの医療機関で空腹時血糖値とHbA1c値を調べていると思うが、SGLT2阻害剤を使用する際は必ず食後血糖値で使用の可否を決めなければならない。HbA1cが6%台かつ空腹時血糖値100㎎/㎗であっても、食後血糖値は300㎖/㎗を超える場合がある。

SGLT2阻害剤は血糖値の高さに比例して利尿が増す。食後血糖値を見ずして処方した場合、脱水症に至る可能性が高い。脳梗塞や急性腎不全を生じる可能性もある。

2週間処方で体重が1㎏以上減少した場合は薬効より脱水を念頭に置かねばならない。そのため処方前にNa、K、Cl、クレアチニン、アルブミン、Htなどを必ず検査して2週間後に脱水が疑われた場合、必ず再検すべきだ。

クレアチニンやアルブミンが増加方向で変化していたら脱水傾向を示すと考える。Kも低下方向に変化する可能性もある。CKが上昇していたら尚危険であり、場合によっては横紋筋融解症を発症する可能性もある。

問診も重要である。口渇の有無、深夜・未明の下肢の筋クランプの有無、起床時の立ちくらみや眩暈など必ず毎回、聞く必要がある。身体的脱水症のチェックは欠かせない。

一般の人は恐ろしい。昼食時、どん兵衛にオニギリ、デザートにアイスクリームを食べるのは珍しくない。糖尿病患者だからといって必ずしも皆が食事制限をやっているわけではない。

糖尿病は医者が治してくれるものだと多少、考え違いをしている患者も相当数いる。先日、日中は肉体労働に従事している患者さんが夕食時、ご飯2杯等を食べ未明に眩暈発作を生じ朝方、脳外科を受診した。

脳外科では異常なしとのことで同日、当外来を受診したのだが体重変化から1ℓ以上の脱水症と判断し、ラクテック500㎖とメイロン40㎖を静脈的に投与し、さらにトマトジュース1本を飲ませて帰宅させた。

SGLT2阻害剤使用時の留意点

  ⑴Hba1c値が6%台であっても、必ず食後血糖値を見て使用の可否を決めること。まずは

   低用量から使用を開始する。

⑵最低でも毎食後500㎖の水と少量の塩類(梅干し小1個程度)を摂らせる(特に体重減

   少期)。

  ⑶クレアチニン、アルブミン、Na、Kを頻回に検査し脱水の有無をチェックする。脱水が

   存在するようなら点滴等で処置を行う。ラクテックなどの無糖のECF補充液を点滴する

   が、K値が不明な場合トマトジュースを飲用させる。

⑷毎回問診で、口渇の有無、深夜~未明の筋クランプの有無、深夜から早朝にかけての立

   ちくらみや眩暈の有無を聞き、身体的脱水症状のチェックを行う。

  ⑸脱水症状が疑われる場合、眠前にNaCl 0.8g + KCl 0.2g MIXを500㎖の微温湯に溶か

   し飲用させるか、梅干し湯や塩入トマトジュースを飲用するよう指導する。

⑹体重安定期、すなわち体重減少が止まるまで長期処方は念のため行わない。2週間処方

   を維持する。

⑺聞きかじりで安易に処方しない。また一次産業従事者(農業、漁業)、肉体労働者の方、

   昼間ジョギングする方、スポーツする方なども要注意。常に脱水、腎機能障害の評価が

   必要。

追記:

SGLT2阻害剤は糖尿病治療薬として画期的な薬剤です。ただし使用法を間違うと大変な事態を生じ得る可能性もあります。特に夏期や高温の日が続く際には、より慎重に投与してください。

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