減量に対する薬物療法⑶
- 盛岡減量研究所
- 2015年6月1日
- 読了時間: 2分

糖質制限糖質制限が有名だが、いわゆる糖質を30g/日以下に制限するスーパー糖質制限に対しては代謝低下の点から反対する。ただ減量を考えた場合、ある程度の糖質制限は必要であり欠かせないものである。この糖質制限を行なってくれる薬剤がある。厳密には糖尿病治療に用いられるSGLT2阻害剤というものであるが、この薬剤を服用すると余分なブドウ糖を尿中に排出してくれる。
一般的に食後血糖値が200mg/dl以上で、血液中のブドウ糖は腎臓尿細管より尿中に排出されるとされているが、私の印象ではIGTといわれる糖尿病予備軍の人にも有効であると考える。IGTとは食後血糖値が140~199mg/dlを示すグループである。もちろん糖尿病患者に比して有効性が低いと思われるが尿糖陽性を示す場合が多い。
そもそも肥満はIGTであるある可能性が高い。肥大した脂肪細胞からインスリン抵抗性物質が過大に分泌されているので、糖質摂取後の短い時間(おそらく1時間前後)は140mg/dl以上の高血糖を示していると考えられる。
糖尿病診断検査に75gブドウ糖負荷試験というものがあるが75gブドウ糖液を服用し30分、60分、90分、120分と血糖値を測定するものだが75gブドウ糖負荷で血糖値が200mg/dlを超えなくても、100g~150gブドウ糖負荷で血糖値が200mg/dlを超える可能性がある。
ゆえに当研究所では75g糖負荷試験に代えて実食試験を考案した。すなわちブドウ糖を用いず糖質の多い食品を負荷して血糖値変化を調べるものだ。それには全国のコンビニで容易に手に入り脂質やタンパク質の含有量が極めて少ない食品を被験者に摂取してもらい継時的に血糖値を測定する。
例えば、あんぱん、せんべい、おにぎり、コーラ、カップ麺など糖質だけで150g以上になるように設定して飲食してもらう。実際に多くの人が昼食にカップ麺、おにぎり、コーラ、せんべいの1枚ぐらいは摂取しているはずだ。
HbA1c値は過去1か月間の平均血糖値を表す指標なので食後の高血糖の検出には向かない。当院ではSGLT2阻害剤を用いるため必ず食後に来院するよう指導している。朝の空腹時血糖値は食事性の血中ブドウ糖を評価するのには向かない。糖新生やグリコーゲン由来のブドウ糖が存在するので、血糖値は必ず食後で評価する。
食後400mg/dlを超えるような、あまりの食後高血糖値を示す患者にSGLT2阻害剤を投与した場合、多尿から脱水症や腎不全を発生する可能性もあるのでDPP-4阻害剤等で、ある程度血糖値を下げた上でSGLT2阻害剤を使用する。IGTを示す肥満患者では、そこまでの高血糖にはならないと推測するので減量の薬物治療のベースに加えることにしている。