新・体組成計の臨床への応用(糖尿病編)
- 盛岡減量研究所
- 2017年8月21日
- 読了時間: 2分

糖尿病治療薬の中でビオグリタゾンとSGLT-2阻害剤は、どちらも体液組成に影響を与える。ビオグリタゾンは細胞外液(ECF)を増やすように、SGLT-2阻害剤は減らすように作用する。そのためビオグリタゾンは細胞間隙の水を増やすのでECFを増大させ浮腫と血漿量が増大する。逆にSGLT-2阻害剤はブドウ糖と共にNaを体外に排出するので、いわゆる脱水を誘導する。それらの影響を見るのが血液データであり、その信憑性を証明するのが体組成計なのである。
例えばビオグリタゾンを使用した場合、血液データではRBCは低下する。アルブミンも低下する。脂肪細胞は分解・小型化されるが脂肪細胞の数が増えるため細胞間隙は増大する結果ECFは増す。小型になった脂肪細胞はTNFαの分泌は低下するのでインスリン抵抗性が改善する。簡単にいうと無駄な高インスリンの状態が続くと肝臓に脂肪が蓄積し脂肪肝になる訳だが、高インスリン血症が改善されると脂肪肝は改善する。それがNAFLDやNASHの治療と予防になる。
一方、SGLT-2阻害剤はブドウ糖を、尿を介して体外へ排出する。その結果、体内の水と塩も同時に失うので、血漿部分から体液は喪失しRBCやアルブミンは高値を示す。血漿は間質と同じECFに属しているので間質を含めたECF自身が減少する。つまりビオグリタゾンはECFを増やし、SGLT-2阻害剤はECFを減らす方向で作用する。それを客観的に評価するのが体組成計である。すなわちECFの変化を数値として表せる唯一の方法である。
ただこの際、細胞内液(ICF)はどう変化するのかも体組成計で評価できる。ただ一般的に健常者ではECFとICFはバランスしている。ガイトンの生理学書とは異なり、その比率は総体水分量(TBW)のECF38%、ICF62%である(InBody解説書より)。例えばSGLT-2阻害剤を使用した時にはECFが減少するが、ICFも変化する。SGLT-2阻害剤が過剰に効果を示した場合、ECFの浸透圧が低下するためECFとICFの浸透圧較差が生まれICFは増大する。SGLT-2阻害剤を長期に使用した場合MCVが増大する。
赤血球は血漿内に存在する体細胞のひとつである。ECFの低浸透圧が持続する状態では赤血球が膨化するためMCVが増大する。SGLT-2阻害剤を使用した場合ECFは減少するため赤血球数は相対的に増加し、さらに低浸透圧が続くとMCVは増大する。それが本当かどうかを見極めるにも体組成計は有用である。赤血球数の変化は血漿量の変化とECFの変化を表す。MCVの変化はICFの変化を表すとするなら、それも体組成計で評価可能である。ビオグリタゾンやSGLT-2阻害剤を使用する場合、体組成計による体液組成の分析は必要である。