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体組成計の臨床への応用(信用度)

  • 盛岡減量研究所
  • 2017年7月27日
  • 読了時間: 4分

最近、タニタの医療用体組成計を購入した。韓国に本社にあるInBodyを購入しようと考えたがコストの点でタニタにした。精度はInBodyの方が高いようだがタニタの方が、操作が簡単なので、こちらをチョイスした。そもそも体組成計を購入した理由は体重に占める水の割合を知りたかったからである。医療用の体組成計は体水分だけでなく細胞内液量と細胞外液量まで測定できる。使い方次第では「かくれ浮腫」や「かくれ脱水症」も検出できる。

厳密には推定できるということである。体水分(TBW)は細胞内液(ICW)、細胞外液(ECW)に区分される。この装置では体水分均衡(ECW/TBW)として表示されるがInBodyでは0.360~0.400すなわち36%~40%を標準範囲と定めている。(さらにInBodyの資料によると健常者はECW/TBWは38%を保つともある。)一方、タニタでは男女差があり男性では40.3~40.9%、女性では41.5%~42.1 %と違いがある。InBodyでは手足の水分量まで測定できるので部位別浮腫が判るが、タニタはそこまで検出できない。ただ、これら体組成計には大きな問題があった。

もちろん摂食、飲水、便秘などの攪乱因子はあるが一番は身長である。仮に空腹時で排便・排尿後であろうとヒトは加齢により身長が縮むのである。例えば若い時160㎝あっても80歳になって150㎝ということもあり得る。結論から述べると成長が止まった時に初めて臓器細胞の数が決まる。同じ細胞の数で身長が10㎝縮んだら体水分はどうなるか。単純に考えると体水分量は同じだとして%体水分量は変化するはずだ。

そんなこともあり、患者の記憶によるMAX身長を聞き出して計測に利用してみた。その上でInBodyのECW/TBWとタニタのECW/TBWを比較してみた。InBodyのデータはデモの際に得られた100名ほどのデータと比べたのだが、結果はタニタに誤差?というかタニタの設定した正常参考値とも多くは逸脱し高い値が出た。どうやらICWの値が平均で2kg~5kg不足している状態だ。タニタのECW/TBWは48%や50%などという値が相当数出た。

体組成計の原理は複数の周波数の電流を流して細胞の内側と外側の電気抵抗を測定することができ、細胞外液量(ECW)と細胞内液量(ICW)各々のデータを得るのだ。まず低い周波数は細胞の外側のみを流れ、高い周波数細胞の内側と外側を流れるとされている。タニタでは5kHz~500kHzの範囲で測定、InBodyでは範囲が広く1kHz~1MHzで測定している。

各々の資料から判断すると50kHz以上の高い周波数の電流が細胞内液量(ICW)を正確に算出するのに必要なようだ。簡単にいうとタニタにICWの誤差が多く出る。ECWについては採血検査で赤血球数が妥当な値であれば血漿量は正常であり、アルブミン値にもよるが間質液量も正常であると推定されるからだ。もしタニタにさらなる精度を期待するなら1kHzと1MHzを追加して、よりワイドバンドで測定しなければならないであろう。

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ところで先日タニタを用いて自分自身の体組成を計測してみた。体重が71.15kg、ECWが15.1kg、ICFが21.85kgよってECW/TBWは41%、厳密に計算したら40.8%とカウントされた。この数値はタニタの正常範囲に入っている。その際、同時に採血を行い、赤血球数をみたら440万/μLであった。これは過去のデータ470万/μLに対して血漿量が1.1倍増加している計算になったのでECWを補正してみた。その結果15.1×440/470≒14.1kgになった。これが本来の私のあるべきECWである。

さらにInBodyの言っている38%になるべくICFを計算してみると14.1÷0.62≒22.8kgになった。赤血球数で補正することで実測値に相当近づいた。TBWは実測したECW15.1kg+本来のICF22.8kg≒TBW37.9kgの結果を得た。その数値でECW/TBW計算すると39.8%となった。この値は実はInBodyの値と極めて類似している。結果、私の場合15.1-14.1=1.0kgのECWの増加があると判明した。

タニタのデータの中には若くて比較的痩身な場合、あるいは筋肉量が多いと思われる健常者はタニタが設定した基準範囲に収まり、InBodyの基準値である38%に近い値が出ることがある。特にタニタにおけるECW/TBW時にInBody並みの精度が得られるが、筋肉量の少ない高齢肥満女性においてはICWが低く出る。したがってタニタで体組成を調べる場合ECW÷0.62でICWを再計算してやる必要性がある。

またECWにおいても赤血球数による補正が必要だ。そして本来あるべきIWCを算出し実測したECWを足してTBWを求める。赤血球数は過去7年間の値を参考にするが、男性は470万、女性は420万を一応の中央値とみている。タンパク質不足で低アルブミン血症の患者やNAFLDなどで続発性アルドステロン症があったり、または心不全などでECWが増大している患者では循環血漿量は増大し赤血球数は減少しているから、タニタの場合には補正が必要になる。

ただタニタの場合、体脂肪率が標準範囲の場合体水分量(%TBW)を男性は55~65%、女性は45~60%の範囲にあるとされているので%TBWが高い場合にはECWだけでなくICWも補正してやる必要性もあるかもしれない。その場合、赤血球容積MCVで補正する。例えばMCVの中央値を97とした場合、MCV108は108÷97=1.11倍ICWが増大している可能性があり、MCV90の場合90÷97=0.93倍にICWが減少しているとも推測されるからだ。

鉄欠乏性貧血や腎性貧血、巨赤芽球性貧血あるいは多血症がある場合には応用できないがInBodyによるところの「ECW/TBWが38%を保つ」という点でタニタでは補正の上に補正するという技しかない。それほどタニタは信用度が低いと言える。ちなみにInBodyでは33~39%までを「標準」、39~40%までを「やや高い」、40~43%までを「高い」と説明している。したがってタニタのようにECW/TBWが48%や50%などというのは頭からおかしいのである。

 
 
 

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