飲酒による低血糖対策(予防)
- 盛岡減量研究所
- 2017年6月15日
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当院では24時間血糖測定器FreeStyleリブレを購入して診療に応用している。先日、とある50歳代の軽症糖尿病患者の結果を見て驚いた。(グラフ参照)大量飲酒後の未明から翌昼過ぎまで50mg/dl以下の低血糖モードが続いたのだ。その患者は男性でBMI32程度の肥満と脂肪肝を伴っており、かつ家系に胆管癌や心臓病があったので、軽症糖尿病ではあるがSGLT-2阻害剤を使用していた。むろんリブレの結果を見てSGLT-2阻害剤を中止するよう連絡した。
その患者は普段は缶ビール1本ぐらいしか飲まないとの話であったが、その検査の週末、友人と大酒を飲んだということであった。本人の話では瓶ビール2本と焼酎2合ほどだということだが(おそらくは、記憶にないぐらい飲んだと思うが)、それにしても凄い低血糖の連続である。睡眠中の自覚症状はなかったが、翌朝も二日酔いで「しんどかった」程度だったと語ってくれた。いわゆる低血糖症状である空腹感や発汗や振戦はなかったようだ。
ただ驚いたことに朝食後、さらに昼食後に血糖値が一時的に回復しているが、やはり低血糖に陥っている。すなわちこの低血糖モードの際にはアルコールが残っており、その間、糖新生が抑制され続けたと考えるべきであろう。もちろんSGLT-2阻害剤の影響は排除できないが、SGLT-2阻害剤の能書によると血糖値が150mg/dl以下では尿中へのブドウ糖排出はないとされておりアルコール単独での糖新生抑制作用もあり得る。
これはアルコールが残留していると常に糖新生が抑制されている環境にあるならば、糖質制限食で減量中の方々の飲酒はヤバい。中には、ほとんど炭水化物を摂取しない減量法や糖尿病の食事指導を行っているスポーツジムや医療機関も存在する。糖質制限の本を出していたライターが突然死したこともあった。インスリン不足のある程度進行した糖尿病の方はインスリン不足なので低血糖にはなりくいとは思うが。

ところでキューピーから面白い健康食品が発売されている。それは「よ・い・と・き」である。アルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素のサプリメントである。飲酒すなわちエタノールを摂取すると血液中のエタノール濃度が増し、酔いの状態になる。しかし経時的にこれらの脱水素酵素により酢酸に変換される。生まれつき、これらの脱水素酵素が多い人は酒が強いとされている。逆に脱水素酵素がない人は、酒を一口飲んだだけでひっくり返る。
そのアルコール脱水素酵素含有のサプリメントは理論的にアルコール性低血糖、つまりアルコールによる糖新生の抑制を軽減させる可能性がある。個人的には飲酒の夜、寝る前にこのサプリメントとフルクトースを服用すれば、二日酔いの予防と飲酒後の低血糖もある程度防げると考える。