その後の脳浮腫対策
- 盛岡減量研究所
- 2017年1月5日
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アルコール多飲家はMCV(赤血球容積)が増大している。これはビタミンB12の利用障害と説明される場合も多いが、個人的には細胞内浮腫である。この頃、24時間血糖測定器が発売されるようになったが(当院では未購入)、多少惜しい。もし、この機械が血糖値と同時に赤血球数とMCVが測定できたならデータを三次元化できる。
例えば私はIGTなのだが、食後血糖値が上昇すると赤血球数は減少する。この時、循環血漿量が増加する結果血液は希釈される。ところが3時間後には赤血球数は増加し浸透圧利尿が行われることが分かった。しかし同時にMCVは増大した。つまり細胞外液の浸透圧が減少した結果、細胞内に水が移動したのだ。
細胞内液の浸透圧と細胞外液の浸透圧は常にイコールになるように維持されている。したがって食直後にはナトリウムやグルコースの摂取により細胞外液は増加するが浸透圧利尿作用とインスリンの作用により循環血漿量と浸透圧は減少する。赤血球数の増加は、それを示す。ところでMCVは増加した。逆にMCVの増大は細胞内へ水が移行した証になる。
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酒飲みのMCVは何故、増大するのか。以前も述べたが、アルコールには肉を柔らかくする作用がある。ワインに肉を漬けたり、肉に酒を浸して料理を作ると肉は柔らかくなる。アルコールは肉の細胞膜を脆弱させる働きがある。つまり細胞内に水が入り込む。大量飲酒家は長時間のアルコール残存ゆえ細胞膜が緩くなっている、という感じだ。
もし耐糖能障害を有する酒飲みは細胞外液の浸透圧の急激な上昇と、過大なインスリン分泌による血糖値の低下、さらに浸透圧利尿などの影響により体内の水分バランスは1日のうちに目がぐるしく変化している。それが眩暈症を生じたり筋けいれんを生じる原因になっていると考える。
SGLT-2阻害剤の登場により、従来の利尿剤と異なることに気が付いた。SGLT-2阻害剤は血糖値に依存して細胞外液の浸透圧も喪失する薬剤なのである。
特に酒飲みが糖質を摂取せずアルコールを飲み続けると血糖値が低下する。この際、グリコーゲンからのブドウ糖の供給があれば血糖値はある程度の時間維持されるが、グリコーゲンが不足し、かつアルコールによる糖新生抑制作用が働き始めると、飲酒により血糖値が100mg/dlを維持できなくなり低血糖モードが始まる。
またアルコール利尿が働いたり、血糖上昇による浸透圧利尿が作用したり、さらにSGLT2阻害薬服用中であればナトリウムが大量に尿中に喪失する。結果、細胞内の浸透圧の方が高くなり水は細胞内に移動する。アルコールや高血糖による浸透圧利尿、さらにSGLT2阻害剤服用は、循環血漿量の減少だけでなく浸透圧も喪失するため細胞内浮腫つまりMCV増大につながる。
血糖値は摂取したブドウ糖、体内グリコーゲン、さらに糖新生によるブドウ糖で100mg/dl前後に維持されている。耐糖能障害を有すれば高血糖により過大なインスリン分泌をまねき、数時間後低血糖モードに転じる。アルコールは当初、アルコール利尿を生むが、同時に糖新生を抑制する。
24時間血糖測定器の発明は糖尿病治療中や愛飲家の低血糖モードの検出に役立つと想像するが、もしここにRBCとMCVが測定できたなら、もっと面白いことが解るはずである。
ただ酒飲みの減塩かつ糖質抜きダイエットは行うべきでないという結論に達した。
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