IGTの血糖値変化に関する考察
- 盛岡減量研究所
- 2017年1月5日
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IGT(境界型糖尿病)は将来的に糖尿病に移行したり、NAFLDなどへの強い関与が疑われる病態である。75gOGTTでDM型を示すがHbA1cが6.2%未満の薬物治療の対象にならない症例も含まれる。これら症例の基本的な特徴は膵臓からのインスリン分泌不足というより肥満によるインスリン抵抗性が原因であることが第一に考えらえる。
IGTの特徴は食後の過血糖である。もちろん起床時の空腹時血糖値は正常(125mg/dl以下)である。これらの症例を見ていると食後の過血糖の後に、過大にインスリンが分泌され数時間後に低血糖を生じるということである。低血糖症状はDM治療を受けている患者に比べると症状としての自覚は乏しいが、例えると唐突な空腹感程度である。
そもそも起床時の空腹時血糖値、例えば100mg/dlというのは基本的に糖新生による血糖値である。人間の血糖値というのは基本的に90~110mg/dlに維持されている。データ的には140mg/dl未満が食後血糖値の正常範囲だが、その値では耐糖能障害の初期であろう。もちろん血糖値は1回の食事に含まれる糖質の量にもよるが。
食事に由来する血糖値すなわちブドウ糖はエネルギーとして利用されない場合、インスリンによりグリコーゲンさらには中性脂肪に置き換えられる。ところがインスリン抵抗性が存在すると食後過血糖とインスリン過剰分泌を生じる。これが数時間後の低血糖の原因につながる。同時にインスリン過剰はグリコーゲン蓄積後、中性脂肪蓄積を増加させる。
ところで愛飲家の中には夕食時に主食(お米)抜きで飲酒する人たちがいる。もちろん目的は減量である。肥満改善のためカロリー制限を行う場合、アルコール分のカロリーをカットしてやる必要がある。そのため犠牲になるのが夕食時の主食(お米など)だ。ただ夕食時に飲酒しながら糖質制限を行うと、夜のエネルギー源はグリコーゲン由来のブドウ糖とエタノールになる。
もし夜間にグリコーゲンが枯渇した場合、低血糖モードに陥りエタノールがエネルギー源になる。エタノールはケトン体としてエネルギー利用されるが、糖新生を抑制するので低血糖モードを生じる。IGTではインスリン抵抗性による過剰なインスリン分泌が存在するので、より容易に低血糖モードに至る可能性がある。
インスリン過剰があると内臓脂肪蓄積の原因になりうる。また低血糖モードが続くと低γグロブリン血症の原因にもなりうる。さらに低血糖モード下では細胞内外に浸透圧較差を生じ細胞内浮腫の原因にもなると考えられる。それが結果としてMCV増大につながる。
人間というか哺乳類は肉食動物であれ、草食動物であれブドウ糖がエネルギー代謝の主役であろう。もちろんブドウ糖が不足しても、肝臓や筋肉内に蓄えられたグリコーゲンや、あるいはグルカゴン分泌による糖新生がブドウ糖不足をカバーするシステムだと説明すれば判りやすい。すなわち空腹時の血糖値は糖新生が支えている。
ちなみに体内に蓄積した中性脂肪は、ブドウ糖不足時に遊離脂肪酸からケトン体となりエネルギー源になる。そのためには血糖値が上昇しないような食事摂取や運動が必要になるが、アルコールは代理エネルギー源になると想定されるので糖質を抜いても蓄積体脂肪は減りにくいと考える。
IGTの肥満治療は容易に高血糖にならないような低糖質食が望まれるが、低糖質食を続けている際、飲酒の量や程度によっては低血糖モードから空腹を生じ、深夜にカップ麺などを食べてしまうので注意が必要だ。ただ極端な糖質制限を行っている場合、飲酒は控えるべきであろう。
空腹時血糖値が126mg/dlを超えた場合は糖尿病と診断される。それは前日のブドウ糖の過剰摂取あったというより、インスリン分泌が不足して夜間から空腹時血糖を90~110mg/dlの幅でグルカゴンによる糖新生を御せなかったと説明できる。絶対的空腹時というのは絶食で12時間以上経過したという意味だ。
朝食を食べたが昼飯を抜いて15時に検査をした場合、厳密には空腹時ではない。今後、糖尿病の診断と治療には24時間血糖測定が必要になる。今のところ保険適用も渋い。外来で血糖値日内変動測定ということで二次検診に応用してもらいたい。