NAFLDの診断と治療
- 盛岡減量研究所
- 2016年10月21日
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先日、診療報酬支払い基金から4型コラーゲン・7Sの検査に対して数名分の疑義の問い合わせが届いた。いわゆる検診レベルのAST、ALT、γGTの項目ではNASHやNAFLDを見逃す可能性がある。特にNASHに達した栄養性脂肪肝では低アルブミンと高アンモニアのみが所見のことがある。NASHの中には4型コラーゲン・7Sも正常化していることもある。そのためNAFLDの段階で発見し食事指導や薬物治療が必要になる。
NAFLDのハイリスク患者は肥満、耐糖能障害、飲酒である。純粋のNAFLDでは1日当たりの摂取エタノール換算で30g以下の栄養性脂肪肝をNAFLDと診断するとされているが、実際には飲酒のファクターもかなり含まれると考える。そこで当クリニックでは軽度の非アルコール性脂肪肝やアルコール性脂肪肝の患者に年に1回は4型コラーゲン・7Sを加えている。もちろん異常値や正常高値の場合には後日再検することになる。
実は、このNASHかなりの数がいる。主治医が意識して検査をしないと見落とす可能性が高い。最初の引っ掛かりはAST、ALT、γGTでは正常もしくは軽度肝機能障害程度のことがあり、どちらかというと慢性に低アルブミンが継続しているケースだ。コリンエステラーゼには異常値が出ないこともある。すでにアンモニア高値のケースも存在する。こうなるとNASHなので、アンモニアが上昇する前のNAFLDを発見し治療をするしかないのだ。
そうなると4型コラーゲン・7Sの検査は必須だ。正常値は6.0ng/dl以下だが5.0以上では肝臓の線維化はそれなりに存在する。ASTなどは肝炎の活動性の指標になるが、4型コラーゲン・7Sは肝臓の線維化の指標である。もしNAFLDの段階で発見できた場合には減酒もしくは禁酒、炭水化物の摂取制限、動物性タンパク質の十分な摂取などだ。糖尿病や耐糖能障害があればSGLT-2阻害剤やビオグリタゾンを併用することもありだ。
また甲状腺ホルモン不足、すなわち甲状腺機能低下症が存在するとエネルギー代謝は沈滞し、内臓脂肪は減らなくなるので甲状腺ホルモンを補充してやる必要もある。とくに糖質の摂取制限やSGLT-2阻害剤で体重が減少した症例では相対的甲状腺機能低下症を生じる場合があるのでSGLT-2阻害剤や糖質制限を開始する前に甲状腺ホルモン、すなわちTSH、FT4、FT3を測定する必要がある。
ここでいう糖質制限とはアトキンスダイエットに代表されるような1日20g以下などという厳しいものでなく、1日100~150gの糖質摂取に留めるというものだ。根拠は体内のグリコーゲン量に相当する程度の糖質である。さらにいうなら、麺類や丼物など高インスリンをきたすような食品は避けるように指導する。確かコンビニおにぎりは1個35g程度の炭水化物を含有する。
また動物性タンパク質を中心に最低でも70g以上のタンパク質の摂取を目指す(栄養所要量から)が、これが相当難しい。肉100gに含まれるたんぱく質は約20g、鶏卵1個で約8g程度なのだ。肉300gの摂取は高齢者には無理なので毎食何らかのタンパク質を摂るように指導する。納豆、豆腐、鶏卵、サバ缶、ツナ、精肉などの肉類を毎食に必ず含ませる。例えばカップ麺とオニギリの昼食は禁止である。代替案はゆで卵、豚汁、オニギリ1個だ。
糖質150g(600Kcal)、タンパク質70g~100g(280~400Kcal)、脂質30g~50g(270~450Kcal)。タンパク質を意識的に摂取し1日1200~1500Kcalを目安に減量に努めれば多少の飲酒があってもNAFLDによる肝機能の改善がみこまれる。これには栄養士からの指導が必要であり、患者には病気に取り組む高い意識が要求される。NASHに進展した症例では進行を遅らせることは可能だが改善に導くのは困難である。
追記:NAFLDとは非アルコール性脂肪肝、ALDとはアルコール性肝疾患に区別されるが両方のファクターが混在しているケースが少なくない。NAFLDでは肝細胞に脂肪が蓄積しそれが長い期間を要し線維化が進みNASHに進展する。またALDの中でもアルコール性肝炎は過剰のアルコール摂取により肝細胞が線維化したもので、さらに動物性タンパク質の不足があり肝細胞の修復ができないため多くはAST、ALT、γGTは三桁を超える。治療は減酒や禁酒、さらに高タンパク食になる。
おまけ:今年、ノーベル医学生理学賞を受けた大隅先生は、タンパク質の1日当たりの必要量は200gであり、200-130=70g。つまりタンパク質を1日当たり70g摂っておけば130g分のタンパク質が細胞内のオートファジーで再生産というかリメードしているとの説明であった。そもそも、そのタンパク質摂取量の適正が本当はどの程度か不明であるが、個人的には循環血液量に過不足がなければ血清アルブミン値は4.5mg/dl以上を維持できる程度タンパク質の摂取が必要だと考える。
循環血液量の過不足とは利尿剤やSGLT-2阻害剤使用時には循環血液量は減少傾向に、逆に甘草製剤(グリチロンなど)やNSAID(ロキソニン)や浸透圧利尿剤(メニレット)などでは循環血液量は増加傾向になる可能性がある。もちろんNAFLDやNASHによる続発性アルドステロン症も循環血液量は増加することもある。それを、どう勘案するか難しいところだが。