間質性肺炎?
- 盛岡減量研究所
- 2016年9月7日
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先日、在宅で診ていた90歳の女性が亡くなった。夜中に嘔吐し救急車で某町の病院に運ばれたが3日後に死亡した。入院した翌朝その担当医から間質性肺炎の診断だとのFAXが届いた。私は、すぐに拡張型心筋症の患者だとFAXで返信した。その患者は東日本震災後、心不全が悪化して以来、当クリニックで訪問診療を行っていた患者だ。
毎年、夏に状態が悪化する。彼女は左心不全(肺水腫)の治療のためフロセミド40mg~80mgを時期や状態により加減しながら治療していた。26年7月には状態が悪化し某市立病院循環器内科に入院したのだが、その際の心エコー検査で拡張型心筋症と診断され、かつエコー上EF40%以下(60%以上で正常)、sever hypokinesis(ほとんど動いていない) と診断され、いつ突然死をしてもおかしくないと、その紹介状にあった。
つまり、その患者は肺水腫の悪化を予防するために毎日、脱水症になるぐらいの利尿剤を服用していたのだ。真夏になると脱水症が悪化する。暑さのため食欲も減少するし、脱水の為、熱中症を生じた可能性もある。その際、運ばれた病院で間質性肺炎と診断が下され、その治療を受けた。間質性肺炎劇症型と肺胞性肺水腫はCTや胸部レントゲン写真で良く似た像になる。鑑別診断は簡単だ、心エコーで左房径を測ればすぐ判るはずだ。
また、その病院のCTの解析度や技師の実力など不明だが。まだ私が勤務医の頃、は胸部CTの撮影時には息止めがあった。特に呼吸器疾患や心臓疾患では低酸素のため頻呼吸になる。まして恐怖心のある老人には、息止めができたかも不明である。多分、病院では技師は技師、医者は医者で分業していると思う。それが現状であろう。
昔、旧帝大系医学部出身の呼吸器外科医がストレッチャーで運ばれた仰臥位の胸部写真を診て肺炎と診断したのに驚いた経験がある。多分、肺炎はない。立位深呼吸で写真を撮れなかったにすぎないと想像した。脳卒中の急性期の患者が深呼吸できますか?だって医者は医者の仕事しかしていないし、技師は技師の仕事しかしていない。
特に医者の場合、その知識に関して薬剤師やレントゲン技師、ナースなど全く違う。医学的知識量に大きな差がある。また医者同志でも専門性が高くなっているから話が合わない。お互い理解できないことが、しばしばある。特に専門性が高くなればなるほど、専門知識が必要となるため、他科の話は理解が難しくなる。それが現実であろう。
田舎の開業医は、今の若いドクターと異なり専門性の高いエキスパートではない。だから退屈な何でも診る医者と思われている。また患者と長く付き合う為には、その患者だけでなく患者の家族や、その家の経済事情まで知らなくてはならない。せっかく就職した一人息子の会社が倒産し無職になったとか、孫が薬剤師になって地方の公立病院で働きだしたとか。先日の台風で牡蠣棚が落ちたけど保険で助かった等々。専門性は高くないが生涯に渡って患者と付き合うことになる。(これが結構大変だ)
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ちなみに肺水腫とは心不全のため肺静脈圧が上昇し、肺間質からだけでなく実質(肺胞)に水が溢出する病態だ。それを伝えるためFAXしたのだが、残念な結末であった。だが、すでに2年前に「いつ死んでも不思議ではない」と言われていたし、かつ90歳と高齢である。
その方がエアコンのない古い家に、脳梗塞を患って後遺症のある息子と二人で、ひっそりと暮らしていたことを考えると。まさに寿命が来たと言っても過言ではない。間質性肺炎と診断した主治医は立派に看取ったと思う。詳細は解らないがまさに寿命であったと考える。
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私も開業して20年を超えた、当初から診ている方々の多くは80歳を超えた。そろそろ私も、20年前に初めて会った時の患者さんの年齢に近づいた。もちろん何人かは亡くなられ、施設に入所された方々も少なくない。ただ80歳を過ぎても畑仕事や、養殖の手伝いをされている方々が沢山おられることに驚くのみだ。
専門性が高くなりすぎて、逆にテレビCMで売っている健康食品を購入したり、変な健康番組を鵜呑みにするような無知な医者にならぬようお願いしたい。君は酒飲みの肝臓障害にウコンやヘパリーゼがマジに効くと信じているのか?だったら、もっと勉強しなさい。その前に、大酒のみになった理由を聞きなさい。それが良い医者の始まりになると私は考える。
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