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ビオグリタゾンとSGLT-2阻害剤の副作用対策

  • 盛岡減量研究所
  • 2016年7月22日
  • 読了時間: 3分

SGLT-2阻害剤はブドウ糖と共にナトリウムなどの電解質と水を体外に排出するためECFの浸透圧が減少する結果ECFボリュームは縮小する。同時にECFの浸透圧が減少するので浸透圧が高いままのICFに水が移動しICFボリュームが増大する。判りやすくいうと循環血液量が減少し、かつ細胞内浮腫を形成する。

赤血球数の増加は循環血液量の減少とMCV増大は細胞内浮腫を意味する。ただこれらの変化のうちRBC増加は数日で進むがMCV増大には1か月以上の時間を要する。それは細胞膜が存在するので細胞を保護すべく簡単に水の出入りが生じないような仕組みだと考える。

ビオグリタゾンは脂肪細胞を分割し脂肪細胞の数が増加するためECFスペース(細胞間隙)が増大することで循環血液量を増加させ、四肢浮腫をきたす。すなわちSGLT-2阻害剤とビオグリタゾンの併用は一見、合理的にみえるが落とし穴があった。ビオグリタゾンはECFスペースを増大させるが、ECF区分の浸透圧を上げる訳ではない。すなわちNaは増加するが高Naを誘導する訳ではない。

ところでNASHなどの肝硬変・慢性肝炎は続発性アルドステロン症の原因になることが知られている。またグリチロンや甘草製剤は偽性アルドステロン症の原因になることも知られている。すなわちアルドステロン症は高Naと低Kを誘導する。この低Kは高Naによる希釈性の低Kならびに浸透圧調整の結果尿中へのK排出が促進されるためであろう。

原発性、続発性、偽性アルドステロン症の場合、いずれもECFが増大するため血液検査で低K、低アルブミン、RBCの減少をまねく。(高Na血症にはならずECFの増大がほとんど)

ところで隠れNASHは高齢肥満者の中に相当いる印象を受ける。いわゆるASTなどのトランスアミナーゼが正常値であっても、4型コラーゲン7Sが正常値であっても低アルブミンと、さらにNH3が高値を示す症例が存在する。

また肝機能に異常値があるためグリチルリチン製剤が使用されていたり、整形外科から甘草製剤が投与されていて続発性アルドステロン症+偽性アルドステロン症の場合も存在しうる。もし低アルブミンならび低K、低RBCさらに筋クランプや浮腫をみたら各アルドステロン症を想定しなければならない。

話は変わるが、グリチルリチンがSGLT-2阻害剤のネガティブな作用、すなわちECF減少ならびにICF浮腫を予防する可能性がある。高齢肥満者の中には隠れNASHがいる可能性があるため通常の肝機能検査だけでなく、4型コラーゲン7SやNH3まで精査し続発性アルドステロン症などの有無を斟酌した上で、この2剤が使用可能か検討する必要がある。

肝障害がなければビオグリタゾンとSGLT-2阻害剤を、肝障害があればグリチルリチンとSGLT-2阻害剤を併用してみる価値がありそうだ。ただ高齢者に限らず僧房弁閉鎖不全などの心疾患があると心不全が顕性化する場合もあり投与前にBNPも念のため検査しておくべきであろう。

特に隠れNASHにビオグリタゾンを使用した場合、続発性アルドステロン症を悪化させる可能性があるので注意が必要だ。

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追記:細胞膜を通り抜ける輸送は細胞膜脂質二重層を直接通るか、またはタンパク質を介して通るか、2つの基本的な過程のいずれかで行われる。それぞれ拡散または能動輸送である。(ガイトンの生理学書より)。拡散は単純拡散と促進拡散の2つのサブタイプがあるという。

つまりアルコールは脂溶性が高く簡単に細胞膜脂質二重層を通り抜け細胞内に拡散される。結果としてアルコールは赤血球容積(MCV)増大すなわちICF浮腫(脳浮腫含む)はSGLT-2阻害剤使用時より簡単に生じ得るのだ。

 
 
 

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