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データ(検査値)と濃度

  • 盛岡減量研究所
  • 2016年7月2日
  • 読了時間: 3分

SGLT-2阻害剤使用時の一過性突発性腸管出血の話を書いた。血液生化学検査のデータとは基本的に濃度なのである。絶対量を表しているのではない。例えばアルドステロン症ではECF(細胞外液)が増大する。その結果、その場合のデータは希釈されて低値を示す可能性がある。浸透圧センサーが働くためNaは150mEq/Lを超えないが低Kということで示される。その際ICF(細胞内液)から水が移動するため浮腫と筋けいれんを生じる。

ところで私は毎日ウイスキーボトル半分以上を飲むことを日課にしている。サントリー角瓶40度で350ml以上。エタノール140g以上を摂取している。その結果、肝機能障害を生じるのか、どのような影響が出るのか毎月検査している。単に酒飲みの言い訳と取られても良いがエタノールがどれほど体に影響があるのか、せっかくなので研究している。ちなみに言っておくが、私は肝機能障害がない。

江部先生と同じ時期、アトキンスダイエットすなわち炭水化物抜きダイエットも数年行った。エタノール1gは7Kcalを有しているので140gエタノールは980Kcalに相当する。開業医はデスクワークが基本だし往診もクルマで移動するので、1日の消費エネルギーは基礎代謝+α程度なので教科書的には1800~2000Kcalあれば十分だ。結果、低γグロブリン血症と低IgG血症、リンパ球減少症と巨大赤血球症を発症した。

ところが、震災で禁酒の上、炭水化物摂取の生活を3週間ほど行ったところ全部が改善した。だが酒が手に入るようになり元のアルコール低炭水化物の生活に戻したところ、すべてが元に戻った。すなわち低γグロブリン血症、低IgG血症、大赤血球症だ。そこで炭水化物抜きが悪いのか(酒)エタノールが悪いのか私の検査データを見て検討を重ねた。

昨年はSGLT-2阻害剤を服用した期間もあった。その際、眩暈などの脳浮腫症状が出現したためSGLT-2阻害剤を中止した。以来、朝にメニレットゼリー20gとそばつゆ50ml(食塩換算1.5g)を必ず摂取するようにした。メニレットは細胞外液に浸透圧を与え余剰な細胞内水分を排除する薬剤だ。結果として下記のようにデータの変化がみられた。すなわちメニレット等により循環血液量が増加し465÷407=1.14倍希釈された。

23、4,4     28、6.20     補正後データ

 RBC 465万/μL  →  407万    →  465万/μL

 Hb 15.5g/dL   →  14.0g/dL →  15.9g/dL

Ht 45.0%   →  43.3%   →  49.3%

 MCV  97fL   →  106fL   →  93fL(逆補正)

 ALB  4.9g/dL   →  4.3g/dL    →  4.9g/dL

 AST 23U/L     →  21U/L     →   24U/L

 ALT 15U/L     →   8U/L     →    9U/L

 γGT 41U/L     →  39U/L     →   44U/L

SGLT-2阻害剤使用時のHtの上昇は循環血液量の減少すなわち濃縮を意味する。今回のデータの変化はメニレットによるSGLT-2阻害剤使用時と逆のこと、すなわち循環血液量の増大を図ったものだが、SGLT-2阻害剤使用時には使用前に血算を行いRBCもしくはHtを用いて、その後の生化学データに補正が必要になると考える。

長時間の飲酒は細胞内浮腫が固定化される可能性があるが、SGLT-2阻害剤はそこまでの固定化はないと考える。ただRBCもしくはHtの上昇がみられる場合は塩類の負荷は欠かせない。またNASHや甘草製剤使用中、ステロイド使用中(膝関節注射も含む)では偽性アルドステロン症が潜在している場合もあり得る。

低アルブミン、低K、筋クランプ、筋痛などが存在するなら細胞外液(循環血液量)の増大と細胞内液減少が示唆される。その場合、鉄(フェリチン)やビタミンB12、葉酸などの欠乏の有無をチエックし検査値の撹乱因子を排除し、スピルノラクトンを使用し体液バランスを是正し、できるだけ正確な量(絶対値)を測定する必要がある。

追記:ちなみにMCVを補正する場合は407÷465=0.875と逆にしてみると106×0.875=93になる。しかしMCVが改善しなのは赤血球の細胞膜の特殊性により水の移動が容易でないことが想像されるが、詳細は不明である。ついでにHtはRBCとMCVより求められ数字でありMCVが異常値であれば大きな誤差になる可能性がある。

 
 
 

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