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SGLT-2阻害剤使用時の一過性の突発性腸出血

  • 盛岡減量研究所
  • 2016年7月2日
  • 読了時間: 3分

当院では月間150名ほどの糖尿病患者を診ているがSGLT-2阻害剤使用中、使用後の患者はその3~4割になる。この内3名に下血がみられた。その際、消化器科でTCF等を行ったがほぼ所見なしであった。下血は癌やポリープあるいは炎症性腸疾患でよくみられるが、虚血性腸炎もその一つだ。動脈硬化などが原因で鎮痛剤使用などが引き金になって腸間膜動脈が閉塞して発症する。

ここで問題がある。閉塞だけでは出血しない。例えば血栓ができて一過性に血流が途絶えた後、血流再開時に出血するということだ。脳卒中の中に出血性梗塞というのがあるが、まさに梗塞後に血管が破れ出血を生じる病態だ。脳出血とくくられる脳血管疾患の中に、この出血性脳梗塞が相当数含まれる。

SGLT-2阻害剤は尿中にブドウ糖を排出するが、その際ナトリウムと水なども一緒に体外に排出する。結果として循環血液は濃縮される。血液濃縮はHtの上昇から明らかだ。すなわちSGLT-2阻害剤は細胞外液構成成分であるナトリウムと水も喪失すると考えられる。しかも食後の短時間の間に、簡単にいうと食後の高血糖の後に、急激な循環血液の水分の喪失を生じ血栓ができやすくなると推測する。

ただ3名のTCF所見では、びらん程度で壊死や潰瘍はなかったとのことで、いわゆる重症型の虚血性腸炎ではなかったと推測する。SGLT-2阻害剤使用時には血栓予防のため抗血小板剤が必要なのか、不必要なのか不明である。ただ予防的には水分だけでなく十分な塩分の摂取も必要であり、食後の過血糖(250mg/dl以上)を回避する必要があろう。過血糖が存在すると短時間で尿量が増加するからだ。

その際、有効なのが膵外分泌を刺激しないメトホルミンが第一選択薬になると考える。もちろんボグリボースや長短時間インスリン分泌刺激剤ミチグリドなどの食前投与も効果が得られると考える。また食事指導の際、脂質を摂りながら単純デンプン質(米や麺)を摂取するよう説明が必要だ。

当クリニックは食後血糖値測定を原則にしているが、朝食に、ご飯からバタートーストに変更しただけで食後血糖値300mg/dlから150mg/mlに改善したことより食後過血糖の予防に脂質の同時摂取が重要であると考えるに至った。

SGLT-2阻害剤の投与量は米国では日本人に対する使用量の2~3倍という。おそらく彼らの食事は日本人より2~3倍の脂質を摂取しているからだと私は見ている。朝食はバターをたっぷり塗ったパンに厚切りベーコンエッグ、ミルクたっぷりのカフェオレ。サラダにもドレッシングたっぷり。昼はビックマック2個にフライドポテト&コーク。夕はステーキやパスタなどなど見たこともないような高脂質食品。そう考えればSGLT-2阻害剤は日本人の2~3倍量は必要になるなと考える。

追記:血清データとは全て濃度なのである。循環血液量5Lと仮定し、もしSGLT-2阻害剤使用時にHtが45%から50%に上昇した場合、循環血液量は4,5L弱になる。すなわち500mlの血液水分が500ml不足した状態にあると推測される。血清Naは140meq/lだとすれば約70meq/lの不足になる。これだと塩を4~5gと水500ml追加しなければ循環血漿量は維持できない。SGLT-2阻害剤使用時には水だけでなく塩も必要である。

 
 
 

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