二日酔い翌朝の嘔吐
- 盛岡減量研究所
- 2016年6月13日
- 読了時間: 2分

先日、二日酔いで頻回の嘔吐を繰り返す症例に遭遇した。これは発生メカニズムが自家中毒症に似ている。一般的に自家中毒症は子供の病気であるが、飲酒により同じような症状を発現する。すなわちアルコールの直接作用というより、アセトアルデヒドやケトーシスの状態に陥ると生体の反応として嘔吐を繰り返す病態だ。なぜなら飲酒翌朝、血液中のアルコール濃度のピークは過ぎているし、どちらもアセトアルデヒドとケトーシスが鍵になるからだ。
まず自家中毒症(アセトン血性嘔吐症ともいう)とは・・・・・・
アセトン血性嘔吐症では、顔色不良になり、頻回の嘔吐が現れる。嘔吐に伴ない、コーヒー残渣様(血性)吐物が見られることもある。低血糖を伴なうこともある。アセトン血性嘔吐症は、2~6歳の子供が、発症する(乳児には見られない)。まず口臭が、アセトン臭(やや酸っぱい様な臭い)になる。尿検査で、尿中ケトン体が、強陽性を示す。治療は、ブドウ糖を含む甘い物を食べさせたり、ブドウ糖を含む飲料を飲ませる。嘔吐して、経口摂取出来ない場合には、20%ブドウ糖液を静脈注射する
ただこの自家中毒症は子供なら誰でも発症する訳ではない。原因ははっきりしないが吐きやすい子供と、そうでない子供がいる。子供の頃、よく吐いた人が成人になっても飲酒が原因となるケトーシスを生じ、それに反応し嘔吐を繰り返すと想像する。
炭水化物不足の夕食でアルコールを摂取した場合、翌朝のエネルギー材料はブドウ糖ではなくアルコール→アセトアルデヒド→ケトン体(ヒドロキシ酢酸、アセト酢酸)である。おそらく飲酒がなくても糖質制限をしていると、普段からケトン体モードに陥りやすいと考えるが、非飲酒時であれば糖新生によりエネルギー源としてブドウ糖が優先されるはずであるからだ。飲酒は糖新生を抑制するので、翌朝かなりの量のケトン体が合成されている。
子供の頃、自家中毒症の既往があったなら、おそらく飲酒翌朝の大量のアセトアルデヒド・ケトン体モードの際には自家中毒症と同様な症状を呈しても不思議ではない。治療はグルコースの経口投与。また塩類の投与。アルコールが残っているならフルクトースの投与になろう。吐気や嘔吐が激しい場合には点滴で電解質ならびブドウ糖を投与する。
また予防するなら飲酒中に適度な糖質の摂取ならび塩類の摂取であろう。塩類は脳浮腫の予防のためであり、飲んだ後のラーメンは決して悪い選択ではない。ただ連日では脂肪肝の原因になるので注意が必要だ。また寝る前にフルクトース(果物ジュース)を摂取する手もありそうだ。