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アルコール性脳浮腫について

  • 盛岡減量研究所
  • 2016年1月4日
  • 読了時間: 4分

大量飲酒者にはALDと呼ばれる肝疾患の合併症がポピュラーであるが、それ以外に脳神経系の合併症も知られている。有名なものにWerniche-Korsakoff症候群がある。それはアルコール代謝時にビタミンB1が大量に消費されビタミンB1欠乏を生じるため発症するとされている。またアルコールは脳萎縮や脱髄なども引き起こすとされている。

しかし実際には大量飲酒者には脳梗塞の合併が多い。いわゆる酒飲みの脳卒中である。これはアルコール性脱水症が原因によるとされる。すなわち飲酒によりアルコール利尿が亢進するため脱水を生じ、結果として脳梗塞に至ると説明される。アルコールは脱水症を引き起こすのか、あるいは引き起こす場合のようなメカニズムで脱水症に至るのか考察してみた。

まずアルコール性脱水症の発生のメカニズムは単にアルコール利尿が原因ではない。ラング・デール薬理学書によると「利尿はよく知られているエタノールの作用である。これは抗利尿ホルモン分泌の抑制による。しかし急速に耐性が形成されるため利尿作用は維持されない。」とある。つまり飲酒開始当初は利尿が促進されるが、飲み続けると利尿は逆に抑制される可能性があるということだ。

ワイン1杯や缶ビール1本程度なら初期の利尿亢進より排尿が促される。しかし、その後も大量かつ長時間種々の酒を飲み続けると利尿はセーブされるということになる。またアルコール飲料は低張液であり大量に長時間飲み続けると細胞外液は増加し希釈される。むろん一部は腎臓より尿として排出されるが、腎臓での処理が間に合わなかった場合、浸透圧勾配より細胞内液に水は移動する。

この細胞内液の増加の代表として脳浮腫がある。脳浮腫の症状は浮動性眩暈やふらつきだが、泥酔時や二日酔いの際に見られることがある。この脳浮腫は可逆的であり飲酒翌日の飲食により脳浮腫は是正され消失する。いわゆる二日酔いというのはエタノール代謝が不十分で、アセトアルデヒドが体内に残っている際に動悸(頻脈)や頭痛を生じるものだ。ただ、必ずしも脳浮腫が存在するかとは別だと考えている。

また大量飲酒者では脳浮腫が慢性化する可能性がある。例えば夕方から1~2時間飲酒する分には脳浮腫を生じても軽度で改善も容易いが、毎日朝から夜まで連続飲酒する場合には脳浮腫は改善せず慢性化する場合が想像される。特に食事を摂らずに酒を飲み続けた場合、容易に慢性脳浮腫を生じ得る。

このアルコール性慢性脳浮腫が原因となり脳萎縮や脱髄などが生じると考えられるからだ。アルコール自身はエタノールという栄養素であり薬物でもあるが、直接的に脳萎縮を生じる理由はない。ただ慢性の脳浮腫があったり、しょっちゅう脳浮腫を繰り返した結果として脳萎縮や脱髄に至るのではないかと推測した。

また慢性脳浮腫の状態でナトリウム摂取不足があると細胞外液が縮小する。すなわち循環血漿量が減少するため血管内脱水症を生じる。この時、脳梗塞を発症するのではないか。血管内脱水だけでも脳梗塞の原因にもなり得る。脳浮腫は脱水症の原因にもなるので脳梗塞発症を防ぐためには是非回避しなければならない。基本的には禁酒と適切な食事である。

しかし、禁酒が正解というのは容易であるが、禁酒自体が容易ではない。そこで脳浮腫にならないように酒を飲むしかない。理論的には等張液にすべく塩分を摂取して飲酒することだ。等張とは0,9%の食塩水である。もしビール1000mlを飲む場合には9gの塩分を摂って初めて等張となる。例えば25度焼酎250mlを250mlの水で割った場合には4,5gの塩分を摂って等張に相当する。ちなみに40度ウイスキー200mlを水400mlで割り計600mlとし、それを飲みながら5,4gの食塩を摂取すれば理論的に脳浮腫を生じない。ただ、これでは塩分過剰になる。

実際には腎尿細管でナトリウムを再吸収するので容易にナトリウムは喪失しないが、摂取不足はやはり脳浮腫の原因になる。一度、細胞内に水が移動すると容易には細胞外に戻ってこない。静脈内に生理食塩水や細胞外液補充液を直接点滴するなら別だが、ナトリウムを経口摂取しても血管内にナトリウムが充足するには時間がかかる。

禁酒は無理だとしても、ビールや水割りなどの度数の低い酒を飲み続けダラダラと長い時間を過ごすべきではない。度数の高い酒を短い時間で飲み終え、速やかに眠りにつくしかない。だらだらと長時間、大量飲酒をしたい場合には、飲酒前に多少塩分を補充し、かつ飲む時には、それなりの肴を摂りながら酒を飲む。それが脳浮腫の予防であり唯一の対策である。

追記:過日、昼にワインを1本、夕方に25度焼酎のお湯割りを200ml、さらに夜から朝にかけてウイスキー300mlを水割りで飲んだことがあった。ふらつきが翌日夕方になっても改善しない。酒は抜けているが、ふらつきが収まらない。そこでアルコール脳浮腫について考察してみた。

 
 
 

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