アルコール性脳浮腫のその後
- 盛岡減量研究所
- 2016年1月8日
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長時間飲酒により脳浮腫を生じると前回説明した。ただ治療としてナトリウムの積極的摂取を試みたが効果は必ずしも得られなかった。これは生体内の浸透圧調整が速やかに行われるためだと考えた。長時間大量飲酒時ナトリウム不足はあってはならないが、もし脳浮腫を生じた場合にはナトリウム過剰摂取したからといって容易に脳浮腫を改善できない。
基本的に経口的にナトリウムを摂取しても浸透圧センサーにより150mEq/Lを超えないように調整される。ひとつにはナトリウムの消化管での吸収が緩徐であること、かりにナトリウム濃度が上昇したとして著しい口渇のため飲水行動をとるからだ。ブドウ糖も浸透圧物質だが細胞内外に均等に分布するので細胞外液浸透圧上昇に、さほど寄与しない。
脳浮腫治療薬としてマニトール、グリセオール、イソソルビドなどが用いられている。前2つは頸静脈的投与であるが、イソソルビド(メニレット)は経口摂取薬剤であり使用が容易であり、アルコール性脳浮腫の際の治療にも有効であると考える。実際、服用してみると塩分過剰摂取より自覚的に有効であった。特に起床時に食塩3g程度の摂取(味噌汁など)に追加してイソソルビド20~30gを経口摂取するとふらつきが軽減した。
二日酔い、悪酔いの中にはアセトアルデヒドによる症状と脳浮腫による症状が混在している可能性がある。アセトアルデヒド症状として頻脈(動悸)、嘔気、頭痛であり、脳浮腫症状として眩暈、頭重、よろよろ歩きなどである。どちらも飲酒中もしくは飲酒翌朝に生じることから区別がつき難いが、眩暈が長引く場合には脳浮腫と考える。厳密には飲酒翌日血中アセト酢酸値が正常で、かつ眩暈が残る場合には脳浮腫と解釈して良いと考える。
ラング・デール薬理書によると「アルコール脱水素酵素は主に肝細胞に存在する可溶性酵素である。これはエタノールを酸化し、NAD⁺をNADHに還元する。エタノール代謝はNAD⁺/NADH比率を低下させる。(一部略)NAD⁺再生速度限られていることがエタノール代謝を制限しているので、NADHからNAD⁺を再生させることによって働く「酔い覚まし」薬を見つける試みがなされた。そのような薬物の1つはフルクトース(果糖)である。これはNADHを要求する酵素によって代謝される。フルクトースの大量投与は、エタノール代謝率をかなり増加させるが、酔い覚ましに実用できるほどの効果は得られなかった。」とある。
おそらく酔い覚まし治療を行う際には、同時に脳浮腫治療も行わないと有効性が出にくいのではと考える。すなわち飲み終えて寝る前に果物(フルクトース)と塩分を摂り、二日酔いなら翌朝、果物と塩分(みそ汁)を摂ることによって二日酔いは軽減されると予想される。また果糖は糖新生材料であり、夜間のアルコール性低血糖にも有効なので一石二鳥である。
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