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SGLT-2阻害剤のその後

  • 盛岡減量研究所
  • 2015年11月21日
  • 読了時間: 3分

SGLT-2阻害剤を使用していて面白い現象が得られた。血糖値が100mg/dlでも尿糖3+の場合があるし、逆に血糖値が300mg/dlの場合でも尿糖1+程度のことがある。SGLT-2阻害剤使用時、高血糖で尿糖は増すとされているが、これらのケースでは薬効に反している。

一般的に腎血流量は心拍出量に比例する。すなわち心不全などで腎血流量が得られない場合、いわゆる腎前性腎不全として腎血流量が減少して乏尿になる。もし血糖値300mg/dlで尿糖1+というのは、このような腎前性急性腎不全なのかと考えるべきなのかというと、それには該当しない。なぜならクレアチニンが動いていない。BNPも異常値を示していないし、ヘマトクリットやアルブミンの上昇(血液濃縮)も存在しない。

SGLT-2阻害剤使用時、利尿が亢進し相当量のナトリウムが体外に排出されていると考えている。しかし今回の事象で、SGLT-2阻害剤使用時、血漿中のナトリウムが急激に失われるのを防ぐシステムが体内に存在すると考えるに至った。それは尿細管に至る前段階である糸球体が関与しているのではないかと推測した。

ナトリウム摂取不足あるいはSGLT-2阻害剤によるナトリウム喪失が原因でナトリウム欠乏を生じ腎糸球体濾過機能が十分に発揮できないためと考えた。ガイトンの生理学を参考にすると「糸球体濾過促進力とは糸球体毛細血管静水圧とボーマン嚢膠質浸透圧で構成される」また同書に「分子量に基づく糸球体毛細血管の物質濾過性」を引用すれば水>ナトリウム>グルコース>>イヌリン>>ミオグロビン>>>アルブミンである。

結論からいうと血漿中のナトリウム不足が存在すると糸球体濾過促進力(主に糸球体毛細血管静水圧)が低下し、血糖値300mg/dlであってもグルコースが尿細管SGLTに届かず尿糖1+にしかならない。逆にいうとナトリウム過剰があると糸球体濾過促進力が亢進し尿細管SGLTに届くので血糖値100mg/dlでも尿糖3+になる。

簡単に説明すると、SGLT-2阻害剤使用時にもかかわらず血糖値300mg/dlで尿糖1+という状態は、ナトリウムが体外に排出されるのを妨げられている状態である。その理由としてナトリウム欠乏による糸球体濾過力不足が原因で、結果としてグルコースが尿細管に届かない、という感じではないのかと考える。

また、そのシステムを乗り越えた場合に腎虚血からクレアチニンが上昇する状態、すなわち脱水による可逆性の腎機能障害を呈すると考える。これは高々100例ほど1年半SGLT-2阻害剤を使用した私の感想である。

この件は糖尿病専門医だけでなく腎臓内科医、生理学者などが症例をまとめて、いちいち検討してみる必要性がある。Hba1cだけ見ていれば良いという訳ではない。クレアチニンだけ見ていれば良いという訳ではない。皆で知恵を持ち寄って検討すべき課題だと考える。

とりあえず今回のまとめとして、SGLT-2阻害剤を使用する上で、その効果を十分発揮してもらう(つまり尿中にグルコースを十分排出する)ためには食前もしくは食事中にナトリウムを十分に供給する必要があるという結論に達した。つまりSGLT-2阻害剤使用時には塩を盛らなければならない。

 
 
 

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