愛飲家の糖尿病治療
- 盛岡減量研究所
- 2015年10月30日
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SGLT-2阻害剤はマイルドな糖質制限食と似ているが、ナトリウムやカリウムも喪失することより細胞外脱水症ならび細胞内浮腫を生じ得る。そのため食後に300mg/dl以上の高血糖を示す症例ではグルファストなどの即効型インスリン分泌促進剤やベイスンなどのαグルコシダーゼ阻害剤などで、これを是正しつつSGLT-2阻害剤を少量から使用すべきだ。
またDPP-4阻害剤やメトホルミンも併用薬剤としては適当であると思われるが、女性の場合ビオグリタゾンは3か月以内に留めるべきである。浮腫だけでなく肺水腫の原因になる。当院の症例では僧房弁膜症の高齢女性が肺水腫より低酸素を生じた。四肢に浮腫をきたす前に肺間質に浮腫を来した。ビオグリタゾンの中止と利尿剤の使用により改善したが、病院でのCT診断は間質性肺炎であった。なおこの患者にはSGLT-2阻害剤は使用していない。
また心臓肥大症を伴っている肥満女性にSGLT-2阻害剤を用いていたところ朝方、動悸を訴えて来院した。心電図にて発作性上室性頻拍症を確認した。1週間前に受診した時より2kgも体重が減っており脱水症が原因になったと考えられた。ソリタT3号500ml+10%NaCl 20mlを点滴したところ正常調律に戻った。聞けば前夜にうどんとイモ類を食したという。糖質過剰摂取に対してSGLT-2阻害剤が過大にヒットしたと考えた。
70~80kg程度の肥満の女性患者数名にSGLT-2阻害剤を用いたがHbA1cはやや改善を示したものの体重の変化がない症例が存在する。使用期間は4か月~14か月であるが、まさにホモ型の肥満遺伝子を有すると考えている。ちなみに、これらの症例は全て酒を飲まない。SGLT-2阻害剤服用後、尿糖は(2+)~(4+)なのでブドウ糖は体外に十分、排出されているが肥満遺伝子ゆえに体重が減少しないと思われる。
食事療法中の男性患者のHbA1cが6.5%に悪化したためSGLT-2阻害剤であるスーグラ25mgを投与した。ところ2か月半で12kgの体重減少を認めたので驚いた。もともと愛飲家であったがSGLT-2阻害剤を服用するにあたり禁酒したとのこと。それでも体重の減少が著しいのでスーグラを休薬した。休薬前のHbA1cは6.1%であった。禁酒により代謝が改善したと考える。薬効というより禁酒1か月で代謝は正常化したためと考えている。
愛飲家の糖尿病患者に対してSGLT-2阻害剤を用いるのは注意が必要だが、SU剤やメトホルミンも朝のみの使用が望まれる。SGLT阻害剤は低血糖と言うより細胞外脱水症と細胞内浮腫を避けるために、SU剤とメトホルミンは夜間低血糖を回避するためである。アルコールの糖新生抑制作用は結構強力であり、愛飲家の先生は飲みながら血糖値を測定することをお勧めする。またスーパー糖質制限食とアルコールの組み合わせも避けるべきである。