痩せ遺伝子女性の話
- 盛岡減量研究所
- 2015年9月25日
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先日、痩せ遺伝子を有する40歳の女性が不調を訴えて来院した。身長167~8cmで体重は45kg前後、甲状腺機能亢進症の家族歴があるが彼女の甲状腺ホルモンは正常範囲(TSHやや低値、FT3やや高値、FT4中央値付近)であった。彼女の主訴はふらつきと吐気、手足のしびれであった。
彼女は低血圧、動悸(頻脈)、眩暈、食思不振、下痢、吐気など様々な症状を訴えて来院するのが常なのだが夏季に症状が悪化する。理由は簡単で痩せ遺伝子を有するからだ。痩せ遺伝子を有するということはエネルギー代謝が亢進しているということであり、発汗過多により摂取エネルギーを処理している。
また痩せ遺伝子を有するということは体脂肪が少なく水と塩を貯め込む細胞間隙が極めて少ない。つまり発汗過多と体水分蓄積不能の両方が同時に存在するのだ。想像すると朝食を摂取した後、昼食まで水分保持が持たない可能性が高い。すなわち食後3時間程度で脱水状態になり種々の症状が出現する。
結果、昼食をパスすると午後には最悪の状況に至る。そして当院を受診する。治療は簡単で、それは輸液と塩の内服処方である。今時の女性なので朝食を抜くこともある。その時は昼前に受診する。痩せ遺伝子を有するとは、かくも大変なのである。特に夏季は症状が悪化する。
だが冬期は基礎代謝が亢進する時期でもあり同様の症状が出ることも少なくない。今回は秋口で、それらの症状は緩和されるはずであるが同様の症状で来院した。そこで詳しく問診したところ月経4日目であった。月経直後から約5日間は利尿亢進期すなわち脱水期なのである。月経とはエストロゲンとプロゲステロンの分泌が低下し利尿が亢進する時期だ。
普通このような訴えの女性患者は自律神経失調症などと誤診される可能性が高い。セルシン、ドグマチール、ガスターさらには半夏厚朴湯などを処方して帰宅させることがあろう。しかし、それは正解ではない。一番効果があるのは輸液である。メイロン40ml静注でも良いが、ラクテックのような細胞外液補充液が良いと考える。
特に、このケースでは胃腸炎のような下痢嘔吐に伴う極端な脱水症とは異なり、生理的な性ホルモン変動にともなう電解質喪失と、それによる体水分の喪失である。私の場合にはカリウムも考慮してソリタT3 200ml+10%NaCl 20mlの混注を行う。ラクテック500mlだと時間がかかりすぎる。220mlなら半分の時間で済むし、効果はテキメンだ。
先日は、お土産にOS-1 500mlに食塩を適当に入れたものを持たせた。もちろん冷蔵庫に冷やしたOS-1を取り出し、彼女に開封してもらって私が食塩を振り入れた。それでも最後に、3時間後にはまた脱水症になっているかもしれないからと言葉を添えた。
痩せ遺伝子を有する若い女性は性ホルモン周期に伴い脱水症状や発汗過多、起立性低血圧症、動悸(頻脈)など自律神経失調症的な体調不良を生じやすい。その結果、メンタル的にも疲弊している患者もいるが、高張電解質液の補滴で劇的に症状は改善する。