女性に対するSGLT-2阻害剤投与について
- 盛岡減量研究所
- 2015年9月18日
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非閉経女性は排卵前からエストロゲン分泌が亢進して子宮内膜が増殖する(増殖期)。「エストロゲンはアルドステロンや他の副腎皮質ホルモンと同様に、腎尿細管によるナトリウムや水の貯留を引き起こす」(ガイトン生理学より)。また同じ理由で食欲も増す。
その後、排卵を経て月経開始までプロゲステロンが分泌されエストロゲンと共に子宮内膜肥厚を維持する(分泌期)。そして月経までの間、ナトリウムや水の貯留は維持される。
すなわち増殖期後半から排卵さらに月経開始までの期間を浮腫期、月経直後より利尿が亢進しナトリウムや水は体外に排出されるため利尿亢進期(非浮腫期)と呼ぶ。女性は性ホルモン周期に伴い体水分変動による体重の変化が顕著である。
もし非閉経糖尿病女性にSGLT-2阻害剤を投与した場合、浮腫期の体重増加を軽減させる可能性がある。それはSGLT-2阻害剤の薬効により尿中へのブドウ糖排出に伴いナトリウムや水も排出されるからである。
逆に月経直後から利尿亢進期が始まるが、SGLT-2阻害剤を用いると相乗作用で脱水症を生じる可能性がある。さらには細胞内浮腫を形成する可能性も否定できない。
つまりSGLT-2阻害剤を用いない場合には月経前後で体重変化が大きいが、SGLT-2阻害剤を使用すると症例によっては細胞外浮腫から細胞内浮腫へと変化するだけで体重の変化は小さくなる可能性がある。
またSGLT-2阻害剤はナトリウムと水を体外に排出するためエストロゲンによる子宮内膜増殖を軽減させる可能性がある。そうなると子宮内膜増殖を刺激すべく逆に、エストロゲン分泌をさらに増加させるかもしれない。
更年期で月経不順を有する糖尿病女性にSGLT-2阻害剤を使用した場合、月経周期を早めたり、不正出血の原因になる可能性がある。またエストロゲンに依存する婦人科系疾患を悪化させたり、あるいは発症させたりする可能性がある。
まとめるとSGLT-2阻害剤を非閉経期女性に使用した場合、性ホルモン周期による体重変化を抑える可能性がある。また更年期女性ではエストロゲン分泌が刺激され、不正出血を生じたり、閉経が遅延したり、あるいはエストロゲンに依存する婦人科系疾患を発症もしくは悪化させる可能性が、なきにしもあらずと考える。
もし減量も兼ねてSGLT-2阻害剤を用いる場合、子宮内膜増殖期~分泌期(浮腫期)には減塩食に、月経開始2日目過ぎあたりから加塩食にすべきであろう。月経期(利尿亢進期)に細胞外液に浸透圧を提供する目的で加塩食にする。(加塩食とは例えると汁物である。)
またSGLT-2阻害剤使用中は月経開始から終了までの5日間程度は飲酒を控えるべきだ。アルコールは利尿作用と糖新生抑制があるため、低浸透圧性脱水症の原因になる。つまり細胞内浮腫を悪化させ体重減少が叶わない可能性がある。