骨粗しょう症治療の勘違い
- 盛岡減量研究所
- 2015年7月18日
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高血圧症などで当クリニック通院中の高齢患者が腰痛のため整形外科を受診した。その結果、骨粗しょう症と診断され週1回服用のビスホスネート剤が単独で処方された。いつものことだがビスホスネート単独使用は良くない。処方した医者はカルシウム代謝を知らない。
高齢者の骨粗しょう症は長年のカルシウム不足などにより高回転型骨粗しょう症であることが、ほとんどである。つまり骨からカルシウムがどんどん漏れている状態なのだ。難しくいうと、破骨細胞の働きが亢進して骨吸収が増大している状態ということになる。
なぜそのようなことになるのか説明すると血液中のカルシウム濃度を一定に保つため、食事で不足するカルシウムを骨から動員しているからだ。もしカルシウム濃度に過不足があると生命維持に失調をきたす。つまりビスホスネートを単独使用した場合、低カルシウムに陥る可能性がある。
そのため低カルシウム血症を回避するためにはカルシウム製剤さらにはビタミンD製剤を併用する必要がある。骨粗しょう症患者のカルシウム摂取量は少ないがゆえに骨粗しょう症を発症している。だから少なくともカルシウム剤を併用して低カルシウム血症を予防してやらなければならない。
また過日、ビタミンDと炭酸カルシウムで骨粗しょう症治療している患者が、他院で高カルシウム血症を指摘され、慌てて孫と共に来院した。そのビタミンDとは活性型ビタミンDエルデカルシトールなのであるが、カルシウム剤と活性型ビタミンDの併用は高カルシウム血症をきたしやすい。
アメリカでは活性型ビタミンDを骨粗しょう症治療に用いない(メルクマニュアルによると)。基本的に天然型ビタミンDを400IUだけだ。天然型ビタミンDは腎臓で活性化されるため必要な分だけ利用されるため高カルシウムにはなりにくい。もともと活性型ビタミンDは、ビタミンDを活性化できない慢性腎機能障害の患者用の薬である。
ただ骨粗しょう症の治療に活性型ビタミンDとカルシウム剤を用いて高カルシウム血症を生じた場合、これらを中止すれば高カルシウム血症はすぐに消失する。問題なのは二次性副甲状腺機能亢進症や癌の骨転移によるコントロールできない高カルシウム血症なのである。
骨粗しょう症治療においてカルシウム代謝を知らない医者に遭遇することが度々ある。そのような場合、当院で炭酸カルシウム等を処方して帳尻を合わせることがある。