top of page
検索

リンパ浮腫と細胞内浮腫

  • 盛岡減量研究所
  • 2015年7月6日
  • 読了時間: 2分

20年ほど前に卵巣癌で子宮・卵巣全的術を行い、さらに放射線治療を受けた40歳代の女性であるが、彼女はその後遺症により下腿リンパ浮腫を発症して某病院に通院していた。

当院では高血圧症で来院していたが、比較的難治性の高血圧であり、愛飲家でもあった。本人は下腿浮腫を気にしており、ある時高血圧症に対して利尿剤を併用した。

利尿剤は血漿中の水分ならびNa等のミネラルを尿中に排出することにより循環血漿量を減少せしめ血圧を下げる作用がある。またアルコールにも利尿作用がある。

一方、下腿リンパ浮腫とは骨盤内手術や放射線治療あるいは外傷などで骨盤内もしくは腹腔内リンパ管が物理的に閉塞もしくは狭窄を生じて発症する下腿浮腫である。

一般的にリンパ液も血漿と同じ細胞外液に含まれる体液成分である。ゆえに利尿剤を使用することで浮腫にも効果が期待できた。

しかし実際に使用してみると、なんと彼女は細胞内浮腫を生じ顔が腫れてしまったのだ。

細胞内浮腫は大量飲酒家に見られることがある。すなわち血漿など細胞外液水分の主成分であるNaが体外に喪失し、細胞外液の浸透圧が低下した結果、水が細胞内液に移動して顔面筋に浮腫を生じたのであった。

たぶん、全身の筋肉浮腫や脳浮腫も生じるが、見て判るのは顔面浮腫だ。彼女の場合、利尿剤を中止することにより顔面筋の腫れは消失した。ちなみに彼女の赤血球容積(MCV)は103fLと大赤血球症を呈していた。

リンパ浮腫に利尿剤を使用しても効果は、あまりなく細胞内浮腫の原因になることがある。浮腫は奥が深い疾患である。

心疾患、腎疾患、肝不全、甲状腺ホルモン不足や過剰、副腎ホルモンの異常(クッシング症候群やアルドステロン症)、女性ホルモンの過剰や薬剤性(ステロイドホルモンやグリチルリチン、NSAID)などで生じるが、それでも原因が不明なものが存在する。

老人に見られる原因不明の浮腫の場合、下腿筋量減少に伴う心臓への血液還流障害や三尖弁閉鎖不全などによる右心不全が潜在している可能性があると考える。

 
 
 

当ホームページ上のすべての文章や画像などの無断転載は禁止します。

Copyright © 2015盛岡減量研究所 All Rights Reserved.

  • Facebook アプリのアイコン
  • Twitterのアプリケーションアイコン
bottom of page