末期NASHの治療に関して(おまけ編)
- 盛岡減量研究所
- 2015年6月11日
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先日、80歳代の肥満女性の肝硬変が判明した。過去10年間の肝機能の指標であるAST、ALT、γGTは異常なし、4型コラーゲン7Sは正常範囲、ただ慢性の低アルブミン血症と高γグロブリン血症が存在した。
この症例では抗甲状腺抗体陽性の甲状腺機能低下症がありT4製剤を服用しるが甲状腺ホルモンは基準範囲にあった。
検尿や臨床症状からネフローゼや蛋白濾出性胃腸症は否定的。たとえ高γグロブリン血症は甲状腺疾患で説明がつくとして、慢性の低アルブミン血症がなぞであった。
まさかと思い、ある日、血中アンモニアを測定したら、なんとアンモニアが異常高値を示していた。アンモニアについて説明すると・・・
アンモニアは
体内ではたんぱく質の代謝の過程で生成され、神経毒性を持っています。 そのため直接血液で運ぶのは危険なので、組織で生成されたアンモニアは毒性の低いグルタミンやアラニンに変換されて肝臓に運ばれ、肝臓に運ばれたグルタミンは尿素に変換され、腎臓より尿中に排泄されます。
したがって肝機能に障害があれば、血液中にアンモニアがたまり、高アンモニア血症になります。 アンモニアの測定は肝機能の指標となり、治療の効果判定にも利用されます。
肝臓の機能は予備能力が高く、通常はアンモニアの産生が増加しても高アンモニア血症をきたすことはほとんどありません。肝障害などにより血液中のアンモニアの濃度が上昇した場合は、劇症肝炎などの非常に高度の肝機能の低下が疑われます。
肝硬変や劇症肝炎などで、血液中に多くのアンモニアが残ると、意識障害を起こすことがあります。肝硬変や劇症肝炎の重要な合併症である肝性脳症を招くことがあります。
基準値
30~86μg/dl
血液検査の基準値は実施する施設や検査方法などによって異なります。
一回だけの検査数値でなく過去の検査数値との比較が大切です。
疑われる病気
高値の場合 肝硬変末期、劇症肝炎、門脈大循環吻合など
(「血液検査・検査項目の見方と基準値」より引用。一部略)
NASHには通常の肝機能検査(AST、ALT、γGT等)で異常がなくても、肝硬変によるアルブミン合成障害のための慢性の低アルブミン血症が存在し、かつアンモニア高値を示す例が存在する。
特に高齢者の栄養性肝炎(昔のアルコール性肝炎、脂肪肝)はウイルス性肝炎に比べ肝炎のアクティビティは高くなく既に沈静化しており、4型コラーゲン7Sが正常範囲のこともある。この場合リーバクトやアミノレバン等を投与すべきであり、SGLT2阻害剤を用いてのNASH治療は積極的な適応はないと考える。