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脂肪細胞の成り立ち

脂肪細胞は胎児期には多くないとされる。生後から脂肪細胞は増加し幼児期には大方の脂肪細胞の数が決まると言われている。二次成長期に脂肪細胞は増加するが、その後は増加しないとされていた。最近は成人になっても稀に脂肪細胞の数が増えることもあることが分かってきたが基本的に脂肪細胞の数は乳幼児期に決まるといって良いと思われる。

 

乳幼児期に高カロリー食品を与えると脂肪細胞の数は余計に増えるとされており、それゆえ米国などでは200㎏を超える肥満者が珍しくないと説明される。この場合の高カロリーとはおそらく高脂肪食と推測されるが日本では高炭水化物食なので、そこまで脂肪細胞の数が増えない。したがって200㎏を超える肥満者はないに等しい。

 

また二次成長期の脂肪細胞の増加は女性に顕著にみられ、女性ホルモンの影響を受けると考える。一方、男性は男性ホルモンの影響を受け脂肪細胞より主に筋肉細胞が増加するのではないかと想像する。ちなみに上等な肉牛は牡の若い成牛で、筋肉肥大させるため牧場で運動させ筋肉の肥大をはかりつつ、さらに筋肉の間に脂肪を差し込むよう飼育する。一方、乳牛はもちろん雌牛で筋肉を増やす必要もなく筋肉内に脂肪を差し込む必要はない。だから基本的に牛舎にいて運動も積極的に行わず筋肉は少なく乳作りに一生を捧げる。

 

高カロリー食を続けると肥満に至る。それは脂肪細胞が肥大しエネルギーを貯め込むとされているからである。そして肥大した脂肪細胞から種々の活性物質が分泌され各成人病や発がんの原因やきっかけになるとされている。だから脂肪細胞の数が体重に比例して増加すると、これらの理論が合致しなくなる。脂肪細胞は肥大するばかりで増加はしない方が極めて合理的なのである。

 

ピオグリタゾンという糖尿病治療薬は、この肥大した脂肪細胞を分割し小さくする。すなわち脂肪細胞を小さくすることでインスリン抵抗性物質を減少せしめ糖尿病を改善させる。つまり糖尿病は改善したが結果として脂肪細胞の数は増加する。この脂肪細胞の増加が新たな問題を生む。

 

脂肪細胞の数が増えるということは、以前より太るということである。また細胞が増えるということは細胞間隙が増加することになる。この結果、細胞間隙の水分量が増す。つまり浮腫の形成や体内水分量が増加するのである。それにより心不全が悪化したり、さらなる体重増加を引き起こすのである。そうなるとピオグリタゾンを中止し、利尿剤を併用しなければならない。ピオグリタゾンは、その使い方が多少難しい薬剤なのである。

 

 

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