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タンパク質の重要性

タンパク質は動物の体の大方を占める成分である。車で例えれば糖質はガソリンで、脂質がオイルの役割とするならタンパク質はその他全部である。つまり骨格、筋肉、皮膚、爪はもちろんホルモンや血液凝固因子さらには免疫グロブリンや膠質浸透圧を提供するアルブミンまで、すべてタンパク質なのだ。ヒトもあらゆる動物も体の成り立ちはすべてタンパク質でできている。タンパク質を欠くというのは生命維持の観点から見るとマイナスの方向性をもつのである。生物は常にタンパク質を補給しないと死にたどり着くのだ。

 

タンパク質とはアミノ酸の集合体である。肉からは動物性タンパク質を、植物からは植物性タンパク質を摂取し、消化し、アミノ酸という形で全身に供給する。アミノ酸の中には他の栄養素から合成可能なものもあるし、合成できないものもある。特に体内で合成できないアミノ酸を必須アミノ酸と呼ぶ。そもそも動物と植物では体内組成が全く違うので、植物性タンパク質だけで生命維持をはかるのは困難である。ちなみにベジタリアンは動物の肉を食さないが魚や貝類、エビやカニはOKなのである。

 

私は常々「糖質を控え、タンパク質を多く摂れ」と繰り返し説明し、それに沿った食事指導をしているが、みんな糖質(炭水化物)が大好きなのである。江戸時代のように毎日10㎞とか平気で歩く時代なら糖質は即エネルギーに変わるので、優れた栄養素であったと考えられるが、現在の日本ではそれほど重要ではない。もちろん糖質はエネルギー代謝に重要な栄養素であるには間違いないが現在の日本では最小限で良い。所詮、余分な糖質は脂肪に変換され体重増加に貢献するだけの栄養素に過ぎないのだ。

 

「毎日の不可避的なタンパク分解の20~30gを除いて、生体は可能な限り、ほとんどすべて炭水化物または脂肪をエネルギーとして使用する。しかし、飢餓が数週続いた後、貯蔵した炭水化物と脂肪が枯渇し始めると、血中のアミノ酸は速やかに脱アミノされ、酸化されてエネルギーとなる。…略…炭水化物や脂肪のエネルギーへの利用は、通常タンパク質の利用よりも優先して起こるため、炭水化物と脂肪はタンパク質予備protein sparersと呼ばれる [Arthur C.Guyton John E.Hall, 2010, ページ: 905]」と述べている。すなわち三大栄養素のなかで一番重要なのはタンパク質なのだ。ただ働くだけの栄養素としてタンパク質だけ利用するのは実に効率が悪い。それゆえ糖質(炭水化物)を利用する。ライオンは生肉しか食べないが、タンパク質や脂肪から糖新生を行い、その上でエネルギー活動を行っている。「糖質制限食は高くつく [江部康二, 2007]」と述べているように、まさにタンパク質は価値ある栄養素なのである。農耕の発見が人類の爆発的増加を生んだが、それは糖質の量産であり肉体労働を前提に発見されたものなのであるからだ。

 

 

引用文献

Arthur C.Guyton, John E.Hall. (2010). Textbook of Medical Physiology,11th Edition(ガイトン生理学 原著第11版). (御手洗玄洋, 訳) 港区, 東京都, 日本: エルゼビア・ジャパン株式会社.

江部康二. (2007). ドクター江部の糖尿病徒然日記. 参照先: http://koujiebe.blog95.fc2.com/

 

 

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