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骨粗しょう症と二次性副甲状腺機能亢進症

三陸沿岸地域はおそらく日本を代表する骨粗しょう症の発生する地域である。これは長年のカルシウム摂取不足、動物性タンパク質の不足、そして多産など生活習慣による様々な要因が考えられる。骨粗しょう症を診断するのは容易だが治療は相当の年月を要する。特に食生活を是正するのは極めて難しい。老人になり腰が曲がって杖をついて歩く志村けんのスタイルが当然かつ日常的なこともある。ただ驚いたことに二次性副甲状腺機能亢進症を生じている例も存在する。

 

人間にとってカルシウムは骨を作るだけでなく心臓の働きなどを調整する大事な成分だ。過不足があると体は失調をきたす。特に心筋などの横紋筋がトラブルを起こす。そのため血液中のカルシウムは一定の濃度が維持される。たとえ食事中のカルシウムが不足しても骨より供給される仕組みなのだ。すなわち長年のカルシウム不足が存在すると骨のカルシウムが減少して骨粗しょう症に至るのである。

 

この骨からカルシウムが出ていく現象を骨吸収(破骨細胞担当)と呼び、主として副甲状腺が担当している。また腎臓にはビタミンDを活性化させる働きがあり、食事で摂取されたり、紫外線により皮膚で合成されたビタミンDを活性化させ骨を作る仕組みがある。骨細胞を新たに作ることを骨形成(骨芽細胞担当)と呼ぶ。すなわち骨は骨形成と骨吸収のバランスの中で維持されている。骨形成が勝れば骨は強くなり、骨吸収が勝れば骨は弱くなる。

 

もし検査で骨粗しょう症と診断された場合、骨形成に障害があるのか骨吸収が亢進しているのか血液検査で判断できる。当院では骨形成のマーカーとしてBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)と骨吸収のマーカーとしてTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ)を同時に検査しているが、理論的に考えてみるとTRACP-5bが高いゆえにBAPも高い場合がある。この場合、高回転型骨粗しょう症と称され、両者が低い場合低回転型骨粗しょう症と称される。

 

ちなみに骨粗しょう症の予防にビタミンDとカルシウム剤を用いて治療をしたり、予防的にこれらを利用しているケースが多いと思われるが、もし骨吸収が亢進している場合には無効であるケースが存在する。現在、医療機関では骨吸収を抑制する薬剤が利用されているが新たな問題が出ている。それが二次性副甲状腺機能亢進症と呼ばれる病態である。かつて人工透析を行っている慢性腎不全の患者がビタミンDの活性化障害から腎性骨異栄養症を生じたのと同じ病態が骨粗しょう症の患者にも存在することが少なくないことが判ったのである。

 

 

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