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グリコーゲンの話

医学部時代の生化学の実習で「ラットを飢餓状態し肝臓のグリコーゲンが無くなるかどうか」という実験をしたことがある。確か3日ほど絶食にした後、ラットの肝臓を取り出しグリコーゲン量(ブドウ糖値だった気もする)を測定した。その際、教授から「当たり前のことを実験して、どうする」と笑われた記憶がある。すなわち飢餓状態ではグリコーゲンの蓄積しないのである。

 

グリコーゲンとは主に肝臓に蓄積されたブドウ糖であり通常100~150g存在するとされる。そしてグリコーゲンの存在意義は急激なエネルギー利用で血液中のブドウ糖が枯渇した際に利用されるとされている。個人的には睡眠中や運動中にエネルギー源としてのブドウ糖が不足した場合、すなわち低血糖に反応する生体防御の反応だと考えるが糖新生によりブドウ糖が賄えるまでの可及的緊急反応だとも言える。

 

そう考えると糖質制限による減量ではグリコーゲンの蓄積が不足する可能性がある。なぜなら遊離脂肪酸から得たケトン体が主役の糖質制限ダイエットでの血糖値は、糖新生により作り出された低血糖による生命の危機を回避するための最小限のブドウ糖に過ぎないからである。つまり糖質制限の程度にもよるが日常的にグリコーゲン蓄積量は著しく少ないと想像する。

 

糖質制限ダイエットでは総ケトン値は著しく上昇する。すなわちグリコーゲンは著減もしくは枯渇していると考えてよいであろう。糖新生より得られたブドウ糖は生命維持に必要な最低限のものともいえる。おそらく体内では体脂肪から遊離脂肪酸がバンバン出て懸命にケトン体を作り、血糖値を維持するに必要なブドウ糖を脂質やタンパク質から糖新生している状態が想像できる。

 

長期に糖質制限ダイエットをした結果として甲状腺は活性のあるT3ではなく活性のないリバースT3に変換しカテコラミン分泌を抑え、褐色脂肪細胞のエネルギー燃焼作用を抑えてしまう。

 

問題は飲酒である。確かに激しい運動は急激なブドウ糖利用で低血糖を惹起する可能性があるが、運動を中止すればブドウ糖利用はストップする。また糖新生や遊離脂肪酸からケトン体も刺激される。ただアルコールは糖新生を抑制する。すなわち糖質制限ダイエットでも最低限のブドウ糖が糖新生により作られるがアルコールの摂取はこの最低限の糖新生を抑制してしまう可能性がある。では、どうすれば良いかと考えると昼間、糖質を摂取しグリコーゲンを蓄えるか、糖質を摂取しながら酒を飲む。それしかないのである。

 

 

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