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糖尿病治療における糖質制限食の価値

京都高雄病院の江部先生が実践されている糖質制限食 [江部康二, 2007]は、糖尿病治療に有効かと問われれば極めて有効であると断言する。ただし併用薬剤によっては危険な点もある。特に糖質摂取を1日20g以下に抑えるスーパー糖質制限は薬剤を使用しない場合に限るべきだ。

 

糖質摂取がゼロで生命を維持するということはイヌイットのように糖新生モードに変わることになる訳であるが、インスリン分泌を促進するSU剤や糖新生を抑えるビグアナイド薬を使用する場合には、スーパー糖質制限食は禁忌である。ケトン体をエネルギー源にするスーパー糖質制限では生命維持ができないほどの低血糖を生じる可能性が高い。また飲酒も糖新生を抑制するのでスーパー糖質制限食とは相容れないと考える。

 

また糖質制限食という名前が有名になりすぎて肉や野菜は、どれぐらいまで摂取したら良いのかという議論がなされていない。個人的には血清アルブミン値が少なくとも4.0g/㎗以上(可能なら4.5g/㎗以上)で、かつ体重が増加しない量のタンパク質と考える(それは骨コラーゲンなどへのアミノ酸の分配を考慮して)。

 

脂質については肥満があればできるだけ低脂質で、逆に痩せているなら高脂質で構わないと考える。中性脂肪値は家族性に高く膵炎などを併発していなければ糖質制限でほとんどは改善する。コレステロールはスタチン製剤でのコントロールが相当のケースで可能なので家族性であったりASOや虚血性心疾患などのファクターがなければ気にしなくても良いと考える。

 

現在のところ臨床で気軽に使える栄養指標はまず体重、次に血糖値、HbA1c値、コレステロール値、中性脂肪値、アルブミン値、尿酸値である。わざわざ遊離脂肪酸値や総ケトン値まで調べる必要はないであろう。さらに基礎代謝が低下しているか判断したい際にはTSH、FT3、FT4が必要になろう。現在リバースT3は保険収載されてないと検査業者から返事があった。TSHが正常範囲内高値の場合はFT3、FT4が正常値であっても基礎代謝は低いと考えるべきであろう。

 

繊維質はワーファリンを服用していなければ存分に食べても良いと考える。甲状腺機能の問題もあるのでヨードの多い海藻類の摂りすぎには注意が必要であろう。ただ本当の問題は日本人にどれほどスーパー糖質制限を出来る人がいるのだろうか。米と麺類が大好きで菓子や果物など糖質漬けの日本人。そこまで糖質制限を徹底できた患者を診たことがない。おそらく普通の糖質制限食を実践することだって難しい。患者は好きなものを腹一杯食いながら薬の1つや2つで糖尿病をすいすい治してくれる医者を探している。

 

 

引用文献

江部康二. (2007). ドクター江部の糖尿病徒然日記. 参照先: http://koujiebe.blog95.fc2.com/

 

 

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