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インスリン(分泌)スパイクと血糖三角について

かつて当院に勤務していた50歳代のナースがたびたび血糖値50㎎/㎗程度の低血糖発作を起こした。インスリノーマなども考えたが軽度の肥満があったもののHbA1cは当時5.8%程度の非糖尿病の女性であった。よく聞いてみると昼飯は巨大おにぎり1個との話であった。おにぎりは精白された白米のみの単純糖質(ブドウ糖)である。単純糖質は消化吸収が良いので摂食後に過大なインスリン分泌がうながされ夕方近くに低血糖発作を起こしたものと考えた。

 

肥満すなわち脂肪細胞の肥大があるとインスリン抵抗性物質が増加するため必要以上のインスリン分泌がなされ、仕事などによるエネルギー消費と相まって過度に血糖値が低下したものと説明がつく。単純糖質の大量摂取は急な血糖上昇とインスリン(分泌)スパイクを生じ、一過性の食後高血糖とそのあとの低血糖を惹起する。例えれば昼食前の血糖値が100㎎/㎗だとすると、おにぎり摂取後に170㎎/㎗まで上昇し、夕方に50㎎/㎗まで低下した感じであろう。

 

私は単純糖質摂取による血糖値の変動を勝手に血糖三角と名付けているが、ダイエットや糖尿病治療では血糖三角を構成しないような食事をすることを進める。その方が理論的にもインスリン分泌が少なくて済む。簡単な話でキャベツの千切りダイエットであり、タニタ式ダイエットが、それに該当するものだと考える。だから肥満の人が単純糖質のみの食事をすると継時的に低血糖モードになるので必ずオヤツが欲しくなるであろうと思う。

 

ところで糖質制限食を実践している人も案外容易に低血糖を生じる。私も昼飯におにぎりを食べ14時過ぎに糖質ゼロのビールを飲んだ時に低血糖発作を生じた経験が2度ほどあった。ある酒飲みの糖尿病患者が血糖値の自己測定を飲酒後に行うと血糖値が低くなると話していたことを思い出した。かつて勤務医時代にインスリンを使用している入院中の患者が病院を抜け出してカップ酒を飲み、たびたび低血糖で意識がなくなり救急で運び込まれたことがあった。

 

私も糖質制限中に何度も血糖値を測定してみたが、鍋や刺身などの低糖質のおかずを肴に蒸留酒や糖質ゼロの発泡酒を飲んだ後は必ず血糖値が低下する。夕食後は100~110㎎/㎗の血糖値だが、飲酒が進むにつれ血糖値が低下し就寝前には50~70㎎/㎗まで低下する。そこまで血糖値が低下すると不安になる。少なくとも飲酒する場合には朝・昼にある程度の糖質を摂取し、せめてグリコーゲンだけは貯めておいた方が良さそうである。なおアルコールによる糖新生抑制はアルコールが抜けるまで続くので糖質制限をしている方は大量飲酒を避けた方が無難である。

 

 

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