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選択的SGLT2阻害剤について(1年間の使用経験から)

2014年春以降に発売された数種類のSLGT2阻害剤は結論から述べると、相当有効性の高い糖尿病治療薬である。まず単剤で使用する場合、低血糖の発生頻度はかなり低い。そして何より肥満型のⅡ型糖尿病患者の体重減少に貢献する。またSU剤やDPP-4阻害剤などの併用薬剤を減薬もしくは中止することができる。またランタスやレベミルなどの1日1回投与の持効性基礎インスリン療法での投与量を減らすことも十分可能である。

 

肥満型のⅡ型糖尿病患者では肥大した脂肪細胞から分泌されるTNF‐αなどによる高インスリン血症かつインスリン抵抗性により食後過血糖になりやすい。SLGT2阻害剤は、そこにヒットする。すなわち食後過血糖を示す症例に極めて有用なのである。例えば食後血糖250㎎/㎗を示すがHbA1c6.2%未満の糖尿病型を示す症例にも減量の目的で使用が可能となる道筋が見えてきた。SLGT2阻害剤は血糖値が150㎎/㎗前後では効果がないとされており将来、糖尿病に至るような肥満で糖尿病型を示す症例に予防的に投与することで糖尿病の発症を遅らせたり、発症を予防したりすることができるのではないかと。

 

肥満型のⅡ型糖尿病患者にSU剤を投与した場合、逆に高インスリン血症を生じさせ膵外分泌を亢進させるため、結果として膵機能の疲弊を早める恐れがあった。しかしSLGT2阻害剤は過剰なブドウ糖を腎尿細管より尿を介して体外へ排出するため膵外分泌の負担を減らし膵機能の長期保持が期待できる。もし慢性の過剰な膵外分泌刺激が膵臓がんの発生リスクのひとつならSLGT2阻害剤は膵臓がん発症も予防できることになる。

 

またⅡ型糖尿病患者ではDPP-4阻害剤は無効である場合が少なくない。ところがピオグリタゾンは肥大した脂肪細胞を分割小型化することでインスリン抵抗性を改善させる薬剤だが、再肥満や細胞外液増加(浮腫)などを生じやすいことが弱点であった。ならばSLGT2阻害剤とピオグリタゾンを併用すれば膵外分泌を刺激することもなくベストパートナーになり得る。この2剤の併用で期待される結果に届かない場合はDPP-4阻害剤を低用量から開始するという3剤併用が新機軸になろう。

 

SU剤のように膵外分泌を刺激して早期に膵機能を低下させる薬剤や、本来人間の生命維持のために必要な糖新生を抑制するようなビグアナイド薬は糖尿病治療には必ずしも適してないとも言える。食事療法、運動療法、インスリン療法など糖尿病治療は数々あるが、私個人の考えとしては肥満型のⅡ型糖尿病患者の治療にはSLGT2阻害剤が第一選択薬になるであろう。第二選択薬にはピオグリタゾン、第三選択薬にDPP-4阻害剤を選択したい。もしビグアナイド薬を使うなら膵外分泌を保護する目的で早期にインスリン療法を行ない、膵機能の回復を期待した方がましだ。今後はSLGT2阻害剤が糖尿病治療の基本になろう。

 

 

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